歯のおはなし

雑考⑤

<雑考⑤>

前回までに、根管治療を受けた歯が再根管治療に至る経緯を示したが、今回は、その途中の「慢性の根尖病巣の存在」について考える。

根尖周辺組織を攻撃する細菌側と根尖周囲の守備側の平衡が微妙に釣合った結果、「慢性病巣(慢性根尖性歯周炎)」となってくる。慢性病巣は、普段は特段の臨床症状を示さないのが特徴である。しかし、中には、時として回帰性に亜急性化して、歯肉の腫脹・排膿路の形成・咬合痛・根尖部違和感・歯の浮き上がり・動揺・口臭発生等の臨床症状を生じてくる症例があり、再度の根管治療が必要となってくる場合がある。

一方、以上のような臨床所見の全くない、おとなしい慢性病巣も存在し、「Ⅹ線・CT画像」で偶然発見されることがある。「病巣は確かにあるけれども、取り立てて症状はない」である。再治療をこの際に開始するかどうか?は、患者さんの同意を得る必要がある。治療に伴い「症状あり(いわゆる寝た子が起きる)」に変化して、収拾困難になる危険性があるからである。

Ⅹ線・CT画像所見でなんら異常が検知されず、臨床症状もなく「これは治癒状態である」とされる症例においても、まったく安心はできない。とくに再根管治療した歯においては、ほとんどの場合、根管内・根尖周囲にいまだになお細菌(バイオフィルム)が残存し、これが、いつ何時、活性化して再治療が必要となるかもしれない、からである。まるで、「時限爆弾」これが慢性根尖性歯周炎である。

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