歯のおはなし

雑考①

個人的な見解を加えて、今回から数回にわたって、歯の根の治療について考える。
歯科において根管(歯内)治療は鬼門であり続けるといえる。
歯科用CT、ニッケルチタンファイル、拡大内視鏡の導入と根管治療技術の向上は著しいものの、肝心の治療成績が向上していないのでは?という心外な報告がある。根管治療の目標は、「根管外への炎症の拡大防止により、歯を使用可能な状況で存続させること」であり、その具体的な方法は「根管内部の起炎物質(炎症・腐敗歯髄/細菌など)の除去」とその後の「根管の永久的な閉鎖」である。幸いなことに、根管内の起炎物質(とくに細菌)が正常な根管壁を自由に透過することはないので、起炎物質の除去後は、根管の出口部分(根尖孔/側枝・穿孔・亀裂線等)を閉鎖すれば、それ以上の炎症の拡大は阻止されて、歯はその後も使用できるということになる。さらにいうなら、出口部分の閉鎖さえ完全にできるのであれば、根管内の起炎物質を多少取り残しても、問題(根管外への炎症の拡大)を生じないことになる。逆根管充填術の成功率の高さは出口の閉鎖が、根管治療においてより重要であることを意味している。しかし、まずは侵襲性の低い処置、通常通り歯冠側から根尖側にアクセスする一般的な根管(歯内)療法が第一選択になる。「起炎物質の除去」「根管の閉鎖」は、以前より確実に行われているにもかかわらず、根管治療後の失敗率10-30%は、長年(50年間)、変化していないとの先の報告である。
なぜ、そうなってしまうのか?治療成績の底上げができないものか?と常に考えるのである。

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