歯およびその周辺の痛みの原因は、視診を含めた口腔内診査およびX線等で診断できることがほとんどですが、
時として問診内容・臨床所見・診査・画像結果を総合しても診断名に至らない場合があります。
画像所見に姿を見せない根尖性歯周炎も確定診断が困難な病名の一つです。
通常通りの根管治療を行って根管内部に異常所見が見当たらなくても、臨床症状(歯が響く、疼痛/違和感がある、根の先が押すと痛い、腫れている感じがするなど)がまったく改善しない場合があります。歯冠側からアクセスする歯内療法を漫然と行っていたのでは、問題解決困難と判断する場合には、「逆根管充填術」もしくは「抜歯再植術併用の逆根管充填術」等が検討されます。これは問題となっている根尖部分を直接、視認化で状況確認し、根尖部周辺組織の掻把を含めて、根尖閉鎖を図ろうとする治療方法です。
1)下顎左側第2小臼歯;根管治療途中で当院に来院。疼痛ありです。
2) 当院で通常の根管治療を行うも打診痛・違和感を主とした臨床所見が継続、Ⅹ線に異常所見なし、
水酸化カルシウム貼薬も全く効果なしでした。3年経過後もやはり違和感ありで再治療開始へ。
3)2009年12月;抜歯再植を伴う逆根管充填術を行い、所見は消失している
4)2019年(術後10年)所見なしを継続している。歯槽骨および歯根形状にも所見はなし。
考察
通常の歯内療法では、まったく臨床症状の改善がなかった症例。治療に伴う根尖部の複雑な形態付与が予想され、根尖部歯根破折の可能性も否定できないので、抜歯再植術で直接、根尖部の確認を行い、逆根管充填術とともに抜歯窩から根尖部周囲組織の掻把も施行した。いずれにも格別の異常所見は見いだせなかった。
根尖部もしくは根尖孔外に(通常の歯内療法では除去できない)感染部分があり、難治性の根尖性歯周炎に陥ったと思われる。