総入れ歯が歯茎に当たって痛いという患者さんには、入れ歯の調整が必要です。しかし、患者さんのなかには嚙む力が強くて、入れ歯の調整を延々と繰り返し、その過程で入れ歯の破損⇒修理/新規作製を繰り返す患者さんがいます。
以下のような無限サイクルに陥っていく患者さんがいます。
1)入れ歯の下の粘膜疼痛部位発生する
2)接触部位の入れ歯の削除
3)別部位の疼痛が発生
4)入れ歯接触部位の削除
5)別部位の疼痛が発生
6)負けず!に入れ歯の削除
7)削除による入れ歯の菲薄化・経時的な適合性の低下⇒ゆるい/噛みにくくなった※
8)義歯の破損が発生する
9)義歯の修理・裏打ち(リベース)
10)再び接触部位が発生・疼痛発生する⇒1)に戻る
11)いずれかで「新義歯作製」に移行する⇒解決する?⇒しない⇒短期間で1)に戻る
このサイクルの中で歯科医師は「あなたの強い噛む力を入れ歯・粘膜で受け止めきれないのが原因です。入れ歯による治療は限界となっています。入れ歯では昔、歯があった時のような食事ができると期待してはいけません」というような説明します。
患者さんが説明に納得し、入れ歯による治療の妥協点・限界点を理解してくれる場合もありますが、しかし、「歯科医師の技量不足が原因であり、もっと勉強してもっとよく調整をしろ!調整すればするほど緩くなって、しかも噛めなくなったぞ※!」と怒り、支払いを拒否した患者さんもいます。
身内にそっと「入れ歯で食事が噛めていますか?」と問うと、「正直、全く嚙めていない感じがずっとしている」「いくら長時間、嚙んでも食材がバラバラにならない」「最後は諦めて飲み込んでいるのが実際かな?」という答えが返ってくるのです。