前回までに、慢性根尖性歯周炎の存在と再根管治療に至る過程とについて記載した。
ここからは、近年、注目を浴びる歯科用MTA(保険適応外)について記載する。MTAには、持続性のある高い抗菌性、膨張封鎖性、高い生体親和性など今までの歯科材料にはない多くの優れた性質があり、また、水分が存在しても硬化することから、直接覆髄・間接覆髄材としてだけではなく根管充填材さらには穿孔・逆根管充填の充填閉鎖材として広く応用されている材料である。その本体は建築用ポルトランドセメントと考えてよい。セメント水和反応に伴う過程で多量の水酸化カルシウム(高アルカリ性)が生成されるために「高い抗菌性」を有することとなり、また同時にセメントには未水和部分が残存するために高アルカリ性が持続できるのである。
最近、歯科用MTAに各種幹細胞の誘導能力があることが相次いで報告され、根尖部分ではセメント芽細胞および骨芽細胞を誘導し、歯髄組織では象牙芽細胞を誘導することが示唆されるようになっている。以前から水酸化カルシウム製剤でも同様な報告がなされていたが、歯科用MTAの成績はそれを上回るようである。積極的な硬組織治癒(再生治療)を可能にする歯科用MTAに期待したい。