歯のおはなし

原因不明の歯痛(その2)

歯およびその周辺の痛みの原因は、視診を含めた口腔内診査およびX線等で診断できることがほとんどですが、
時として問診内容・臨床所見・診査・画像結果を総合しても診断名に至らない場合があります。
歯根亀裂・歯根破折 に伴う疼痛も確定診断が困難な病名の一つです。
歯根破折は、失活歯(歯髄を除去した歯)に多く発生します。咬合負荷に伴い歯根を構成する象牙質に微小な亀裂が発生し、これが徐々に進行して最終的に検知可能な歯根破折に至るのが一般ですが、 破折線が明確に確認できない場合には、「歯根破折の疑い」となります。破折線が見えないとこの「疑い」病名が長期に及ぶ場合があります。
破折線が実際に存在し、さらに破折線内に細菌が存在する場合には、破折該当部分の歯肉の腫脹・疼痛・排膿、さらには咬合疼痛・歯の動揺をともなう炎症所見を繰り返し起こすようになります。破折=抜歯ではありませんが、破折線が物理的に閉じれずに歯根膜・歯槽骨への細菌感染が抑制できないと判断されると抜歯適応になってきます。
亀裂程度なら根管内部から破折線を除去して対応、完全破折なら一旦抜去して、口腔外で歯根を再建し、再植を試みるようになります(その3に続く)。

2017.05.20(術前)
2017.08.26(術後3カ月)
2017.11.11(術後5カ月)
2019.03.09(術後22カ月)

症例2 67歳 女性:「左側第2小臼歯の抜歯が必要と言われ、ブリッジを切断したがやはり抜歯をしたくない」
1)術前: 左側第2小臼歯頬側歯肉の腫脹と排膿あり、歯牙の動揺は著明でない
2)治療方法:破折歯根抜歯再建術および隣接歯への一時固定
3)術後3~5カ月;徐々に近心歯槽骨が再建され、歯牙の動揺は停止、固定除去後にCADで歯冠補綴を行った
4)術後22カ月;さらに歯槽骨が近心歯根に近接するがすでに限界の模様
問題点;術前のダメージから歯根吸収が予想される

関連記事